回復期 トマトの栽培を通して
回復期に入院されたAさん。
今まで田んぼと畑に力を注いでいました。病気により以前のように外へ出て野菜の様子を見に行く事、世話をする事ができておらず、Aさんにとっての楽しみ・大切な作業が失われつつありました。
「家の田畑が心配」「自分が世話しなければ…」と不安な思いが強く、もともと体を動かす事が大好きであったAさんも気分が落ち込み、毎日暗い表情ばかりでした。
入院生活の中でも田畑に触れてほしい。大切な作業を再び再獲得できるように。という思いから、ベランダにてトマトの栽培を提案しました。
プランター・土の選定など1から育て方を教えて頂きました。Aさんのこだわりは強く、「水やりはこの時間がいいよ」「支柱はこう立てるのがいい」などと、入院してから見た事のないようなAさんの活き活きとした表情がみられ、Aさんにとって本当に大切な作業なんだと心から実感した瞬間でした。
毎日のリハビリでトマトの成長をみる事が楽しみの1つとなり、みるみるうちに大きく成長しました。
今までは「もうできないからやって」と消極的な発言がみられていましたが、自分で立って手を伸ばしトマトを収穫し、自らシンクに立ちトマトを洗って下さるなど意欲的な姿勢が次々とみられるようにもなりました。
育てたトマトを初めて口にした時には、「おいしい、やっぱり自分で育てた物が一番や」と涙され、その後も毎日水やりを欠かさず行い数えきれない程のトマトが収穫できました。
Aさんと出会い、その人にとっての大切な作業というものの素晴らしさを改めて実感する事ができたと同時に、一人ひとりの大切な作業は異なりそれぞれの良さがある事も感じる事ができました。これからも田畑に携わりながらAさんらしく日々を過ごしてほしいと願っています。
回復期リハビリテーション病棟
鈴木菜未(作業療法士)