医療療養病棟-リハビリテーションの一環として患者様にご家族へのお手紙を書いていただきました
世間にコロナ禍が広まって2年ほどが経ち、長い期間入院されている患者さんとご家族は直接顔を合わせることが難しい日々が続いています。
当院の医療療養病棟に入院されている患者さんのAさんとご家族も直接顔を見に行けないならせめてもと、毎週のように丁寧な手書きの手紙を送って下さっていました。
手紙を読まれたAさんも「早く会いたいなぁ」「家族は元気にしているか心配なんだ」と、お互いの会いたい、顔を見たいという思いは日に日に募っておられました。
そこで、リハビリテーションの一環としてご本人に手紙の返事を直筆でお書きいただけることを目標に関わりをスタートしました。
理学療法では、手紙を書く間安全かつストレスなく座っていられることを目標に、両足の関節が座る姿勢に合わせてしっかりと動かせるための訓練と、床ずれができることのないよう姿勢調整も実施しました。
言語聴覚療法では、口からしっかりと食事をすることで栄養を摂ることを目標に飲み込みを安全に行ないながら、ご自身の言葉で手紙の文面を考えて頂けるよう訓練を行ないました。
そして、作業療法では上記で獲得した能力を最大限に発揮し、思いのこもったお手紙を書ききれるよう「鉛筆で綺麗に字を書ける」こと、「想いが伝わる手紙の文面を一緒に考える」という活動を通じて、「手紙で想いを伝える」という、Aさんにとっての大切な作業に取り組みました。
「え―っと、拝啓ってどういう漢字やったかなぁ…」
「これじゃあ、文が硬すぎるなぁ。読んでくれへんわ。」
「ここまでは消そう。書き直すわ」
・・・何度も何度もコツコツと消しては書き、消しては書きを繰り返される Aさんの表情はとても真剣。
そして、ようやく書き終えたお顔は・・・これまでで一番の笑顔でした。
そのAさんの満面の笑顔の写真を、一生懸命書き上げたお手紙に同封しご家族にお送りした所、大変喜んでいただき、リハビリテーションスタッフ宛に丁寧なお礼のお手紙を手書きでいただきました。
スピードや効率化で便利になった現代社会で、敢えて会えない人との時間を想いながらじっくりと綴る「手紙」というコミュニケーションツールの持つ奥深さを改めて感じることができ、患者さんとご家族との想いを少しでもつなぐお手伝いが出来たことを大変嬉しく感じた出来事でした。
〈ご本人、ご家族の方にご了解をいただき紹介させていただきました〉
理学療法士 黄瀬 颯斗
作業療法士 木戸 隆文
言語聴覚士 上田 麻美