おうみリハビリだより

近江温泉病院 総合リハヒリテーションセンターの回復期リハ病棟・介護医療院・医療療養病棟・認知症治療病棟・ 近江デイリハセンターの理学療法・作業療法・言語聴覚療法の紹介

回復期リハビリテーション病棟・・ 退院後の生活って?~その人らしさを繋ぐ~

先月、回復期に入院されていた80代女性Aさんから連絡がありました。

「作った帽子をお世話になった近江温泉さんに寄付できないか。」

という内容でした。

 

Aさんは昔から手芸に健康麻雀、地域ボランティアなど様々なことに興味をもち、人との交流を楽しまれていました。入院中も周りを明るくしてくれる存在でした。

 

「ひとりでトイレに行けるようになりたい」と目標達成に向けてリハビリを進めていましたが、入院前の体力からだいぶ低下したことで「もう歳やな。」「いつどうなっても…。」と悲観的な発言も聞かれるようになりました。

 

そのため、本人の「できるようになりたい」といった目標だけでなく、「どのように過ごしたいか」ということも何度か話し合いました。

ある日、Aさんから「これ(手芸)だけは続けられるかな…。」と病室で編み物を作りながらぽつりと言葉を出されていたのは今もよく覚えています。

 

それからは、動作練習と並行して、ものづくりを教えたり教えられたり

リハビリ以外の時間も横にならずに、座って作品を作っておられる時間が増えました。

 

入院中に作ってくださった作品たち(本当はもっとたくさんありますが)

 

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退院前の外出訓練では、歩行器を持ちながら何とかトイレまで歩くことができましたが、ふらつくことや体調がすぐれないときのために、歩行器と車椅子の併用で在宅復帰することになりました。

 

退院から約1年。コロナ禍であり、すぐにはお返事ができない状況でしたが、緊急事態宣言解除後に感染対策をはかって面会させていただきました。

車椅子をレンタルして頂いていたものは返却され、伝い歩きと歩行器で室内を動かれていました。そして、部屋にはミシンも存在していました!

 

退院後の生活では、「しんどい日もあったけど周りの人が支えてくれた。」「デイサービスでもこんなのも一緒に作れた。」と笑顔で大きな暖簾を作った写真を見せて下さいました。

 

在宅復帰してからも習慣を取り戻すまでは時間を必要とします。そこには、本人だけでなく、環境や支援者の力が大きいと面会させて頂き改めて実感しました。

外出訓練と退院前のサービス調整会議では、「作業をすることで元気になれる 生活行為申し送り表」という本人さんの身体の状態や今後の課題、支援方法の提案などを書面にて作業療法士からケアマネジャーに繋がせていただいています。

 

書面では全て伝えることは難しく、本当はリハビリ見学や自宅外泊など実際に本人さんの状態を見てもらえるのがいいのですが…このご時世。

日々手探りの中、少しでも本人の『大切にしている作業』が伝えられるよう今後も精進したいと思います。

 

手芸を続けて下さっていたこと、何より笑顔が見られたことが嬉しく思います。

素敵な作品ありがとうございます!

 

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作業療法士 神保帆束