おうみリハビリだより

近江温泉病院 総合リハヒリテーションセンターの回復期リハ病棟・介護医療院・医療療養病棟・認知症治療病棟・ 近江デイリハセンターの理学療法・作業療法・言語聴覚療法の紹介

訪問リハビリでの出来事 「俺はトラクターを運転するんや!」

 ある訪問リハビリでのヒヤリハットのエピソードです。非常に患者様から勉強させていただいた出来事なのでつぶやきます。
 当院回復期を退院されたあと、訪問リハビリを開始された方がおられました。
入院中から常に「帰って仕事復帰するんや!」「田んぼをするんや!」と担当者からみれば「自信過剰で危ない方…」何事に関しても、やってみないとわからないとの思いの持ち主でした。
 本人の思いが明確でそして、強く持たれてることで、訪問リハビリが、その思いに添えるか・・・とても悩みました。しかし、訪問を始めて直ぐに変化は出始め、仕事復帰・・・・もちろん家族様の協力があってのことでした。

正直な話・・・・滋賀から毎日大阪まで電車を使って仕事に・・・滋賀から大阪までかなり距離です・・病院でも訪問リハビリでも評価できる距離ではなく、入院中のスタッフも私も、身体(麻痺)の状態から難しいのでは?と勝手に気持ちの中で決め付けていました。

その後、さらにびっくりしたのは、その後、みるみる適応能力を身につけ、家の中では装具も使われなくても安全に歩かれ、次の希望はもちろん「田んぼするからトラクターに乗る」でした。
 私自身、人生で乗ったこともない…使ったこともないトラクターの評価…
患者さん:「○○さん、俺やり方覚えているし大丈夫やで!」
セラピスト:「本当ですか?まず乗れるか腰掛けましょう」
    腰掛はでき、記録にカメラで写真を残すため、家の中にカメラをとりに行くために目を離した瞬間です
  「ブルルルウルルルルルルルウーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
 エンジンのついた音を聞いて慌てて外に出てみると、患者様がこっそり鍵を持っておられ、エンジン点火オン!
患者さん:「これがブレーキやろ、これがギアやろ、これやアクセルやろ、完璧や!」
 自分自身車の免許は持っているし、患者さんが説明してくれることもあっていることがわかり安心していました。
 しかーーーし!!びっくり!!!動かしだされてガレージから出す際にハンドルが切りきれないのでブレーキをいれバックして切り替えようと思ったが、ブレーキがきかない・・・(>。<;)
患者さん:「あれーーーーー!!!ブレーキきかへん!」
セラピスト:「えーーーーー!ちょっと!えーーーーー!鍵抜いても動いてるよ!」
 ギアの切り替えは可能だったので、前進…後進…前進…後進…そんなことをしている間に、緊急時に切るスイッチを発見。そしてようやくストップ。さすがに私、鍵を抜いても動いたトラクターには目が飛び出る気持ちでした。
患者さん:「○○さん!びびったやろ(笑)」
 笑いながらおっしゃられましたが、ご本人様もブレーキが効かなかった際にはかなり焦られたと思います。実はブレーキがきかないのではなく、ブレーキはクラッチを踏んだままでなければ効かなかったことがわかりました。
 こんなお話ではありますが、このあと、この患者様は、家の隣にあるボーボーに雑草が生えた田んぼを綺麗にされました。


今回、私のヒヤリハット・・いやアクシデントにも成りえたエピソードですが・・このエピソードを含む様々な関わりから、患者さん自身が挑戦しようとしていることを「止める」「応援する」ということの難しさを改めて学ばせていただきました。もちろん、訪問リハビリのスタッフとして、トラクターなど農業機具といった地域事に必要とされている道具の使い方などの学んでおかなければいけないとも思いました。田んぼをされるようになられ、今まで以上に生き生きとしている患者さんの顔をみていて、「ありがとう」と言われた時、ここまで「応援してきてよかった」と心から思いました。 

 そして、・・・・今日で訪問リハビリは終了・・いや・・修了・・最終訪問です。いまから行ってきます。

長くなりましたが、読んで頂いた皆様有難うございます。