おうみリハビリだより

近江温泉病院 総合リハヒリテーションセンターの回復期リハ病棟・介護医療院・医療療養病棟・認知症治療病棟・ 近江デイリハセンターの理学療法・作業療法・言語聴覚療法の紹介

一緒に取り組みます! 退院後もしたいこと・やりたいこと~訪問リハビリの活用~

「家に帰ったら不安」「入院中にリハビリで練習したことってできるかな」「今までのように生活に戻れるかな」病院から退院する時、こんな思いはありませんか。我々、訪問リハビリスタッフは、そんな不安を取り除くべく、退院からスムーズに在宅生活移行できるよう、お手伝いさせて頂いています。

今回、訪問リハビリを退院直後より開始し、最近、終了した女性のケースについてご紹介します。

 

70代前半女性、ご自宅で転倒し左大腿骨骨折、手術中に左脳梗塞発症にて軽度の右上下肢麻痺、失語症高次脳機能障害として失行・注意障害が残存しました。回復期病棟でのリハビリを経て、訪問リハビリ開始。病院でのカンファレンスにて院内スタッフからの情報を収集、リハビリ場面を見学し、在宅生活での情報を共有。退院後3日目より、作業療法・言語療法の訪問リハビリを開始しました。ご本人のしたいこと・やりたいことは、

①近所のみんなと話をしながら、グランドゴルフがしたい ②畑・園芸の再開 ③電話の受け答えがしたい ④炊事 ⑤手工芸(以前、公民館で作業活動を近所のみんなと実施) でした。

訪問リハビリでは、身体面のチェックもしながら、家の中での動作を確認。住宅改修箇所はうまく活用できていて、ひと安心。家の中の生活は自立レベルを確認。次に屋外歩行も確認しながら、グランドゴルフもチェック。そして、調理動作・園芸・作業活動は、失行や注意障害へは繰り返し指導ながら一緒に取り組みました。訪問リハビリ以外の時間はご家族に見守りと口頭での指示を依頼し、生活して頂きました。

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リハビリ訪問日には、朝に電話をして本人に出てもらい、実践での会話。言葉の数もだんだんと増えてきました。近所の皆さんとのグランドゴルフに参加している時は、電話には出てくれませんでしたが・・・(笑) そして、約3ヶ月後、「言葉は気になるけど、動くのは出来るようになったから、(作業の)リハビリは終わりでええわ」との発言。ケアマネージャー・ご家族を含めたサービス担当者会議を行い、作業療法は終了、言語リハビリは1ヶ月延長後、終了しました。

 

退院直後から関わることができたため、スムーズに在宅生活へ移行できた一例です。

このように、訪問リハビリでは、ご自宅にて今まで行ってきた生活を取り戻すために、ご本人・ご家族の思いを聴取しながら、一緒に取り組んでいます。

 

認定訪問療法士(作業療法士) 瀧沢 幸美

 

リハビリテーション・ケア合同研究大会 金沢2019!!

2019年11月21~22日に石川県金沢市にて開催された。リハビリテーション・ケア合同研究大会に参加させて頂きました。以下1演題を発表してきました。

『当院家族支援ツール「お悩みほっとアンケート」の改訂~教えて下さい家族の悩み~』作業療法士 冨田啓介

当院回復期病棟では、「お悩みほっとアンケート」を使用し、家族の不安や悩みを聴取しています。運営していく中でのいくつかの課題によりアンケートを有用に使用できていない状況にあった。そのために課題をまとめ、改善に努めることで、回収率の向上、アンケートの有用性を確認できたため、今回発表させて頂きました。その中で、他院との情報交換を行い、アンケートの有用性や需要があると感じました。今後、症例を増やしていき、より良いツールにしていきたいと考えています。

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本発表を通じて学んだ経験を今後に活かし、作業療法士として更にステップアップ出切るように努めていきたいと思います。

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第4回 日本安全運転・医療研究会でのポスター発表

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2019年12月13日~14日、福井県で開催された第4回 日本安全運転・医療研究会で、当院作業療法士以下の3演題について発表しました。

①奥野隆司『自動車運転支援における運転再開者と運転中止者の違い~後追い調査アンケート,運転支援結果からの考察~』

②仲野剛由『視線計測器を使用した健常者・患者の視線変化の違い~Trail Making Test実施中の視線探索に着目して~』

③桐畑将司『ドライビングシミュレーターでの長期間訓練実施による介入前後での比較と検討』

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 当院では外来や入院中の脳梗塞脳出血の方を中心に2012年からドライビングシミュレーターを導入した自動車運転支援を作業療法士が中心になって行っています。また、教習所との連携、企業や大学との共同研究をさせて頂いています。

 今回の発表で全国の自動車運転支援に携わる様々な病院、施設の方と意見交換ができました。今後のさらなる臨床研究に努めてまいりたいと思います。

 

 障がいをお持ちでも運転できる能力を評価また訓練し、困難であれば課題を明確にして指導をするなど、適切な自動車運転ついての対応ができるように日々新しい情報を取り入れていきます。

 

作業療法士 奥野隆司、仲野剛由、桐畑将司

療養病棟入院患者さんへの作業療法~意味のある作業について~

療養病棟で働くOTの思い①

 

 終戦前に生まれ激動の時代を生きてこられた80代のEさん。農林学校を首席で卒業した事、その卒業式には遠方から父親が来てくれた事等、長期記憶は良好で農業にまつわる話題では会話の疎通性が格段に向上します。しかし普段は認知症の影響もあり廊下をウロウロ、話かけても何を言っているかわからない…、他患者さんの部屋に入ってしまう…、といったような言動ばかりが目につきます。Eさんに、作業療法士は何ができるのか…?

 リハビリ室のある3階ベランダ、狭いスペースではありますが毎年春には花が咲き、夏には夏野菜が実っています。そこでEさんと田植えをし、生育具合を見にきて頂きアドバイスをもらいます。そして秋には稲刈り。この作業に携わっている時のEさんの何とも言えない穏やかで満足そうな表情。もちろんウロウロすることなんてありませんし、会話も盛り上がります。Eさんが1番輝いていた頃に戻れる時間なのかもしれません。外気に触れることで風を肌で感じ、懐かしい土に触れる感触や匂いを思い出し、稲の成長を一緒に願う。農業の普及に人生をかけてきたEさん、実際の稲を刈る等の作業自体は難しくても、農作業の場に参加する事でとても落ち着かれます!

 様々な人生経験を積み、多くの困難や苦労を経験されて今に至る高齢の方たち。重度の認知症であったとしても、少しでもいい表情を引き出したい、楽しかった!という感情を味わってほしい、と思います。たとえすぐに忘れるとしても…。人生の終盤に関わるという事は、何人もの患者さんの最期にも向き合わなければいけません。でも、だからこそ生きている時間の大切さや死生観について考えを深めたり、その時に何を患者さんに提供できるか、正解のない毎日の中で考え続ける事ができるのかもしれません。Eさんには、もしかしたらもっと意味のある作業があるかもしれません。でも、できるだけの情報を集め日々模索しながら自分達にできる事をやるしかないと考えます。

 当院作業療法科では今年度から、『PAL活動レベル』を用いた伝達支援シート(認知症をもつ方の活動評価・個別支援シート)を作成し、意味のある作業の選択、レベルに合った作業構成の検討を行っています。他職種への伝達や活用にはまだまだ課題はありますが、『PAL活動レベル』を用いて認知症をもつ方への支援をしっかりできるよう、今後も学び続けていきたいと思います。

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                           (作業療法士:青野貴子)

 

療養病棟で働くOTの思い②

 

 交通外傷後、当院に入院されてきた70代のSさん。事故から7カ月程たっていましたが、入院からしばらくは寝返りをするだけで「痛い!」と叫ばれ、四肢は脱力様でご家族も「車椅子に座れたらいいけど、無理でしょうね。」と話されていました。リクライニング型車椅子には何とか座れるようになったものの、担当の理学療法士と一緒に端座位の評価をした際には、予想通り「痛い!」の連呼ですぐに中断。その後、鼻に入っている管を抜いたり腕を掻きむしる等の理由で、仕方なく両上肢の拘束をせざるを得ない状況になってしまいました。昼夜逆転の日もあり、抑制帯をしていても管を抜くことが増え、リハビリの時間でさえミトン(手袋)や抑制帯を外せずどう関わってよいか悩んでいました。OTの私ができたのは、その都度状態にあった車椅子を選択したり、移乗動作時の介助方法を伝達したり…。そのうち終了間際にはいつも「また、来てな。」と言って下さるようになったので、私の顔は覚えてくれたのでは、と考えました。以降定期的に自室を訪問し、姿勢を直しながらご家族の写真を見て頂き、回想法で会話を実施する等の関わりを通してSさんの人生を知るべく、語りを引き出すよう努めました。穏やかな時は場所の移動をしても混乱がなかったので、畑やお花が好きだった事から3階のベランダに移動し、園芸の活動を提案。また対人交流の場を提供して社会性を引き出そうと試みたりもしました。

 そんな時、師長をはじめとする病棟スタッフが口から食べる事ができたら管を入れなくてもすみ、拘束もせずにすむのでは、と考えて下さいました。もともと嚥下機能に問題があったわけではなく、認知症等の影響から経口摂取不良との事だったので、言語聴覚士の力をかりて、口からの食事が問題ないかの評価を実施。ペースト食から始まり、現在は全粥・刻み食を朝・昼・夕、自力で食べられるようになりました。病棟スタッフのおかげで、ベッド上でも車椅子上でも両手を拘束され昼夜逆転、幻視のような症状まであったSさんが、自分でご飯を食べられるまでになったのです!それなら普通型車椅子の方がよいと考え、理学療法士の力をかりて再び端座位や移乗動作の評価をし、安全に普通型車椅子に座れることを確認。その後、上肢の拘束は外れ、とても穏やかな表情で日々を過ごせるようになりました。

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 OTがSさんの生活を劇的に変える事はできませんでした。でも熱意のある病棟スタッフと一緒に、その時々にできる事を考えながら患者さんに関われる、とってもありがたい病棟です。(※介護療養病棟には「認知症看護認定看護師」さん、また認知症治療病棟勤務の経験のあるベテラン看護師さんがおられます!)一OTにできる事は微々たる事かもしれませんが、他職種と共同・協力しながら患者さんの生活をよりよくしていけたら、と思います。やっと、当たり前の両手の自由を取り戻したSさん。Sさんにとって意味のある作業っていったい何でしょうか…。まだ明確には答えられませんが、それを考えながら関わっていきたいと思います。

                           (作業療法士:青野貴子)

 

幼児園からの御礼状

脊髄損傷で療養病棟に入院中のAさん。

大変器用な方で、作業療法の時間には園芸や木工など取り組んでおられます。

今回、作成したプランターカバーを幼児園に寄付することを提案。

幼稚園には、ひよこ組、星組、みかん組・・・・などあり、それぞれの木工で切り抜き作成をしました。

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そして、先日、写真付きで幼児園から御礼状を頂きました。

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いつもクールなAさんにもお伝えすると、“可愛いな”と大変喜ばれ、部屋に御礼状を飾られています。

 

長期入院生活をされている方でも、作品を通じて社会との繋がりを感じることができました。

現在は、ベランダのベンチを作って頂いています。Aさんの作業は途切れることはありません・・・

 

                             作業療法士 仲野剛由

2020年・・新年あけましておめでとうございます。

令和初春・・そして今年は庚子年・・新たな変化・新たな力が、きざし始める年・・新たなチャレンジの年・・・!

 

今年も、近江温泉病院 総合リハビリテーションセンターは・・

回復期リハビリテーション病棟入院患者さんの、回復期リハビリテーション

認知症治療病棟入院患者さんの、自分らしさを支援する認知症リハビリテーション

療養病棟入院患者さんの維持期・慢性期リハビリテーション

外来患者さんへの、経過に応じたリハビリテーション

介護保険で在宅生活されている方へのケアプランに応じた生活期リハビリテーション

それぞれ・・・

機能訓練、生活行為獲得・向上訓練、就労・役割など活動参加支援、自分らしさを取り戻す-さまざまなニーズに寄り添い支援させて頂くとともに、さまざまな相談にも向き合わせて頂きます。

そして、患者さんを支える家族をはじめ、その仲間たちにも、思いを馳せ、共に考えられるスタッフの育成に努めます。

 

そのために・・地域の総合リハビリテーションセンターとして・・・

各支援の充実に向け、病院内の多職種・他部門においては、さまざまなプロジェクトで取り組み、地域の様々な職種団体・機関・施設・事業所そして行政機関とは、積極的に、私どもから連携を図り、その連携のもと、一人一人のニーズに取り組み、システムとして一層の充実を図ってまいります。

皆さんの・そしてご家族の・Hope(希望)&Resiliency(立ち直る力)・・を支援し、皆さんのリハビリテーションに取り組んでいきたいと思います。

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近江温泉病院総合リハビリテーションセンター部長 石黒 望

 







紅葉狩りに行ってきました!

当院の認知症治療病棟では毎年紅葉狩りに出かけています。

今年も3日間、8名の患者さんと一緒に永源寺までお出かけをしてきました。

この日はおこずかいからそれぞれ好きな物を買って、紅葉を見ながら食べたり、おしゃべりしたりと楽しんで頂きます。

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「いろいろありますね。何がいいですか?」

「どれにしようかなぁ。たくさんあって迷うわ~」

「おでんもいいなぁ」

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お店を見ているだけで会話も弾みます。

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紅葉を見ながらホッと一息。

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普段、病院の中では季節を感じられる瞬間は少ないものです。

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今回のお出かけでは季節を目で見て、肌で感じて・・・お店の人とのやりとり、患者さん同士の会話など地域に暮らす人としての当たり前の光景が見られました。

これからも「ひと」として当たり前の日常を送れるお手伝いをしていきたいと感じるひと時でした。

作業療法士 久田 梓